建設業許可の「とび・土工工事業」では、解体工事は出来ません
建設業法が改正され、新たに「解体工事業」が新設されて、3年以上が経過しました。
以前は、解体工事を請け負う場合、金額により建設業許可の「とび・土工工事業」を受ければ、工事を受けることが出来ました。
しかし、「解体工事業」が新設され、解体工事を請け負うためには、建設業許可の「解体工事業」が必要となります。
ただ、令和1年5月31日までは、建設業許可の「とび・土工工事業」を持っている方でも解体工事をすることが出来る配慮がされていました。(経過措置)
その配慮期間も令和1年6月1日以降はなくなり、解体工事をするには建設業許可の「解体工事業」を持つ必要があります。
解体工事はこれから少子高齢化により、また高度経済成長期に建てられた構造物の解体等、解体工事の需要は高まっております。
それに伴い、建設業許可の「解体工事業」も注目されています。
今回、新たに「解体工事業」を業種追加する場合にどのような手続が必要が、確認していきましょう。
「解体工事業」を業種追加する場合、「経営業務管理責任者」の必要な手続
「解体工事業」を新たに業種追加する場合、まず「経営業務管理責任者」になるための手続きが必要です。
しかし、「解体工事業」を業種追加する場合、既に建設業許可を持っていると思いますので(大体の方は、「とび・土工工事業」の許可を持っている。)「経営業務管理責任者」の資格は問題ないと思います。
よって、「経営業務管理責任者」の特別な手続や用意してもらう書類等は無いと思います。
ただし、以下の方は用意してもらう書類があります。
建設業許可を持ってから1年未満の方
建設業許可の「経営業務管理責任者」になるためには、会社の役員、個人事業主等、営業取引上責任のある地位にあり、建設業の経営業務について総合的に管理した経験がある必要があります。
この経験期間は、基本5年以上ですが、複数の業種の建設業許可を取る場合、6年以上と期間が1年延びます。
最初に建設業許可を取った時(たぶん、「とび・土工工事業」の許可取得時)に、経営業務管理責任者としての5年間の経験は、証明していると思います。
今回は、「解体工事業」を追加するので複数業種の許可となり、経営業務管理責任者の経験期間証明が1年間必要となります。
もし、建設業許可を取って1年以上経過している場合、そのことで経営業務管理責任者の経験年数(6年間)は満たしていることになり手続きは不要です。
よって、建設業許可を取ってから、1年経過していない場合、以下の書類を用意しましょう。
- 自分が役員となっている記載のある会社登記事項証明書(役員就任期間が6年以上)
- 工事契約書・注文書等建設業を営んでいることのわかるもの(1年分、1枚の契約書等)
- 個人の場合は確定申告書(6年分の確定申告書)
新たに経営業務管理責任者を定める場合
これまでの経営業務管理責任者以外のものを新たに経営業務管理責任者とする場合、必要な手続があります。
この場合、新たに経営業務管理責任者となるものが、営業取引上責任のある地位にあり、建設業を総合的に管理した経験が6年以上あることを証明する書類が必要です。
必要な書類は以下のようなものです。
- 自分が役員となっている記載のある会社登記事項証明書(役員就任期間が6年以上)
- 工事契約書・注文書等建設業を営んでいることのわかるもの(1年分、1枚の契約書等)
- 個人の場合は確定申告書(6年分の確定申告書)
「解体工事業」を業種追加する場合、「専任技術者」の必要な手続
次に、「解体工事業」の業種追加をするためには、「専任技術者」を確保する必要があります。
「解体工事業」の専任技術者を確保する場合、以下のようにして確保します。
- 従来の技術者を「解体工事業」の専任技術者にする
- 新たな技術者を専任技術者とする
従来の技術者を「解体工事業」の専任技術者とする
ほとんどの場合、従来の許可業種の専任技術者を「解体工事業」の専任技術者にすると思います。
そのほうが手続きも簡単で、経費も(新たに人を雇うことがない。)掛かりません。
もちろん、従来の技術者(例えば「とび・土工工事業」の専任技術者)を「解体工事業」のすることは可能です。
多くの方が、従来の専任技術者を「解体工事業」の専任技術者にしています。ただし、以下のことに注意が必要です。
注意@ 資格を持っていても「解体工事業」の専任技術者になれない場合
今まで「とび・土工工事業」の許可を持っていれば、解体工事を請け負うことは問題ありませんでした。
しかし、「解体工事業」の新設により、解体工事を請け負う場合は「解体工事業」の許可が必要です。
多くに方が、「とび・土工工事業」の許可に加え「解体工事業」の許可も取りたいと思っています。。
その場合、「とび・土工工事業」の専任技術者を「解体工事業」の専任技術者にもしようとする場合、以下の国家資格ではなることが出来ないので注意が必要です。(ただし、令和3年3月31日まではなれます。)
- 1級・2級建設機械施工技士(但し、令和3年3月31日までは専任技術者になれます。)
- 2級土木施工管理技士(薬液注入)(但し、令和3年3月31日までは専任技術者になれます。)
注意A 資格を持っていても実務経験または講習受講を求められ場合
本来、その業種にあった国家資格を持っていれば、実務経験を必要としないで専任技術者になれる場合がほとんどです。
特に、「とび・土工工事業」の専任技術者に必要な国家資格と、「解体工事業」の専任技術者に必要な国家資格は、共通する資格が多くあります。
但し、以下の場合、国家資格に加え1年以上の実務経験の証明か、登録解体工事講習受講が必要です。
- 1級土木施工管理技士
- 1級建築施工管理技士
- 2級土木施工管理技士
- 2級建築施工管理技士
以上の資格を平成27年度までに取得した場合(よって、平成28年度以降に資格を取得した場合は、国家資格のみで専任技術者になれます。)
実務経験の証明により「解体工事業」の専任技術者になる場合
必要な国家資格を持っていない場合、一定の期間実務経験があれば専任技術者となることが出来ます。
この場合、必要な期間の実務経験があることを証明する必要があります。この証明において、以下の注意点があります。
- 原則、10年間の解体工事実務経験の証明が必要。ただし、指定学科卒業証明が出来れば、証明期間を短縮できます。
- 「とび・土工工事業」の専任技術者になるため、とび・土工工事の実務経験を証明した場合、その証明の中から解体工事の実務経験を「解体工事業」の専任技術者の実務経験証明に使用できる。
- 実務経験を証明した解体工事の契約書等(契約書、発注書、注文書など)の写しが必要。(ただし、経験期間1年間あたり、1工事の契約書等が必要。)
新たに技術者を専任技術者とする
新たに「解体工事業」の専任技術者を定める場合、以下の国家資格を有するか、解体工事の実務経験を証明するかのどちらかです。
「解体工事業」の専任技術者になれる主な国家資格
- 1級・2級土木施工管理技士
- 1級・2級建築施工管理技士
- 技能検定(とび・とび工)
但し、2級土木施工管理技士(薬液注入)、2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)、2級建築施工管理技士(仕上げ)は除く。
解体工事の実務経験10年以上の証明で「解体工事業」の専任技術者になることが出来ます。(ただし、指定学科卒業証明が出来れば、証明期間を短縮できます。)
まとめ
建設業法の改正により、新たに「解体工事業」が新設され3年以上が経過しています。
令和1年6月1日より経過措置も終わり、解体工事を請け負う場合には「とび・土工工事業」の許可では請け負う事が出来なくなりました。
これからの解体工事の需要を考えれば、「解体工事業」の取得は絶対に必要です。
これまで説明してきた「解体工事業」の許可取得に必要な「経営業務管理責任者」、「専任技術者」の確保、どうするか。
現状を把握して、負担の少ない方法で確保することです。