個人事業主から法人組織に変更するタイミングは
建設業を営む形態には、色々あります。
建設業界に関わる場合、建設会社の従業員として、または個人事業主の方の下で技術を磨き、その後独立するケースが多いと思います。
独立する場合、いきなり法人組織として独立する方もいますが、ほとんどの方は、個人事業主として独立をスタートします。
その場合、そのまま個人事業主として建設業を営む方もいれば、数年、または10年以上経過後、法人組織となる方もいます。
個人事業主から法人組織へと変更するタイミングは、どの時期がいいのでしょうか?
この問いには、法人組織になる場合のメリット・デメリットを知ることが必要です。
「法人組織にしようかな・・・?」と思うとき
個人事業主で建設業を営んで数年、または10年以上経過した時、必ず法人組織(法人成り)にしようと思うタイミングがあります。
その時、法人組織(法人成り)になる方もいれば、そのまま個人事業主でいる方もいます。
どちらが正解かは分かりませんが、どのタイミングで法人組織(法人成り)にすべきか、その判断をするためには法人組織(法人成り)のメリット、デメリットがどんなものか知ることが大切です。
今回は、建設業に関して、法人組織(法人成り)のメリット・デメリットを考えて見たい。
法人組織に変えるメリット(法人成りのメリット)
法人組織(法人成り)にした場合、どんなメリットがあるのでしょう。
法人組織にした場合のメリットを見てみましょう。
メリット1 社会的信頼がアップ
会社組織にすることにより、対外的(例えば、工事発注先、取引金融機関)に信用がアップします。
なぜか?
建設工事は、工事金額が大きい案件が多く、工期も長期にわたる場合があります。
もし、そんな案件を請け負っていた時、個人事業主の社長(代表者)が病気、けがで仕事を進めることができなくなってしまったら。
法人組織なら、例え社長(代表者)が病気、けがで仕事を進められなくても他のものが仕事を進めることも可能です。
発注先はその点でとても安心でき、その事が社会的な信用のアップにつながります。
メリット2 金額の大きい工事を受注できる
前項でも書きましたが法人組織にすることにより社会的信用がアップするため、取引先も大きくなってきます。
特に、建設業では取引先が大きくなればそれだけ大きい金額の工事を受注することが出来るようになります。
取引先も、建設工事(特に大きな金額の建設工事)は社会的信用のあるところに依頼したと思っています。だからこそ、社会的信用のある法人組織にするメリットがあります。
メリット3 融資が受けやすくなる
このことも社会的信用アップからもたらされるメリットです。金融機関は、融資先がしっかりと返済してくれることを望んでいます。
しっかりとした利益の出ている個人事業主であっても、その代表者に予期せぬ事情(例えば、事故、病気等)により返済が怠ってしまうことが心配します。
しかし、法人組織なら代表者に予期せぬ事情が発生した場合でも他のものが代役を務めることができ、金融機関も安心です。
メリット4 事業継承がしやすい
長い間建設業を営む場合、代表者が持っている経営資源(例えば、取引先、建設業上の技術、社会的信用)を次の世代に引き継がせたいと思っている方も多いと思います。
特に経営業績の良い法人の代表者なら、強く感じていると思います。
次世代に引き継がせる場合(事業承継)、法人組織にしてあれば、比較的問題が少なく事業を引き継がせることが出来ます。また最近では、国の政策が法人の事業承継を積極的に支援する体制になりつつあります。
建設業許可においても、個人事業主の許可は、例え代表者の身内でも引き継がせることは出来ません。しかし、法人の許可なら、他人に対しても引き継がせることが出来ます。
その他にも、税制面での法人組織に変更することによるメリットは多数ありますが、ここでは、建設業を営む上でのメリットに絞り説明しました。
法人組織に変えるデメリット(法人成りのデメリット)
法人組織(法人成り)にすることは、メリットばかりではありません。当然デメリットもあります。
ちゃんとデメリットもわかったうえで法人組織にするか考える必要があります。
デメリット1 余計な費用が掛かる
個人事業主から法人組織に変える場合、その事でもお金が掛かります。定款(法人のルール)を作ったり、法人登記をしたりと、30〜50万円ぐらいは掛かります。
その他にも、個人事業主なら確定申告を自分ですればよいケースが多いですが、法人組織になった場合、税理士に税制面を頼むことがほとんどです。(ただし、じぶんでやっても問題ありませんが。)
このように法人組織になった時、法人組織の維持する間、個人事業主よりも、40〜50万円ぐらいは掛かると考えた方がよいです。この費用は、売上に関係なく(利益が出ていない時も掛かる。)掛かります。
デメリット2 社会保険に加入が必要
これもお金の掛かる事ですが、法人組織となった場合、社会保険加入は強制です。(個人事業主は加入義務はありませんが、従業員が一定以上いる場合は加入義務が発生します。)
このことも無視することのできない費用となります。建設業界では、社会保険加入の推進が業界全体でされています。
よって、建設業を法人組織として営む場合、社会保険加入を無視することは、取引先からも、建設業許可(役所に対しても)からも許されません。
デメリット3 法人組織を変える場合も費用が掛かる
個人事業主なら、屋号、事業主に住所などを変えても、費用は掛かりません。(建設業許可の届出を行政書士に頼む場合は費用が掛かります。)
しかし、法人組織にした場合、組織の名称、本店、役員の入れ替え等はお金が掛かってきます。(代表者自身で手続をしても、法務局に収める登録免許税が掛かります。)
また、組織の名称や本店の移動がなくても、役員の任期ごとに法務局に手続きが必要となり、その時に費用が掛かります。よって、法人組織にした場合、組織を変える場合に費用が掛かります。
デメリット4 法人組織をやめる時も費用が掛かります
最後に、残念ながら法人組織をやめる場合(個人成り、または廃業)も、費用が掛かります。個人事業主が廃業する場合にはほとんど費用が掛からないのですが。
法人組織の場合、組織を始める時と同じく、組織をやめる場合にも30〜50万円くらいは費用が掛かります。
このように法人組織となった場合、いろいろと個人事業主の時よりお金が掛かります。このお金は、法人組織として利益を出ている場合はもちろん、利益が出ていない場合にも掛かるお金であることを覚えておいてください。
まとめ
建設業を営んでいる場合、法人組織にしようかと悩んでいる方は多いと思います。例えば、
- 取引先から言われたので
- 取引銀行から言われたので
- 顧問の税理士から言われたので
- 売上が上がってきたので
これまで法人組織となるメリット・デメリットを書きましたが、各自それぞれの事情によってメリット・デメリットも多少変わると思います。
今回は、建設業を営む方に対するメリット・デメリットを書いたので書いたもの以外のメリット・デメリットもあると思います。
しかし、法人組織になろうか悩んた時、しっかりとここで説明したメリット・デメリットを考慮に入れた判断をして下さい。